在宅で働く人と切っても切れないのが「腰痛・肩こり」との闘いです。
特に、在宅ワーカーは自宅の椅子に座って作業するパターンが多く、理想的でないデスクやチェアでの仕事で姿勢が悪くなることもしばしばあるようです。
この記事では、肩こり・腰痛の予防、そして悪化防止を目的に、在宅ワーク用のチェアの選び方を紹介しています。
また、理想的なチェアの条件を示しながら在宅用のワーキングチェアや座卓の選び方を紹介しています。重視すべきポイントも記載しているので参考にしてください。
身体の不調にあわせて、または予防として仕事用のチェアを見直してみましょう。
在宅ワークでチェア選びが重要な理由
在宅ワークが急速に広まった2020年には、第一三共ヘルスケアが「テレワーク不調」では特に肩こり・腰痛の悪化が多いという調査結果を発表しました。
副業として在宅ワークを行う人や、フリーランスで自宅を中心に活動する人にとって、仕事環境の整備は一時的なテレワーカー以上に注意したい点です。
得意なことや好きな仕事でも、作業環境が悪いとパフォーマンスが落ちかねません。気持ちよく働き、顧客に満足してもらう仕事をするためにも作業環境の要であるチェア選びは入念に行いましょう。
理想のワーキングチェアの条件
自分の身長や体型と合ったチェアを買う場合以外にも、現在使っているチェアをカスタマイズすることで理想的な環境に近づけることが可能です。
あまりお金をかけずに環境を整えたい場合には、以下の項目を参考にしてカスタマイズしましょう。
一般財団法人日本オフィス家具協会の「安心・安全なイスの選び方」では、以下の項目が挙げられています。
一般財団法人日本オフィス家具協会(以下、JOIFA)の公式サイト
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- 机の高さとひじが90度に保たれる高さ
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90度よりもさらに肘が曲がる状態だと、腕の位置に伴って肩が上がってしまい、肩こりの原因になります。
個人により腕の長さは異なるため、床に座った状態から肘が90度になる高さを測ると理想的です。
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- 足裏全体が床に着く
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作業中、足が浮いてしまうよりも、膝より下の体重を支えられるようにかかとが床に着くのが理想です。
使っている机が高く、つま先だけが床につく場合などは、足置きやフットレストを利用して調整しましょう。小さなクッションや低めの足場であれば安価に揃えられます。
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- 膝先が座面と並行、またはやや高くなる
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チェアによっては、前傾姿勢になりやすいものもあります。背骨や肩の位置が直立時の姿勢に近くなるよう、膝が座面よりも低くならないようなものを選べるとベストです。
使っているチェアが前傾気味の場合は、対策用のクッションで膝の位置が高くなるように調整するとよいでしょう。
JAIFAが提唱しているこれらの条件に加えて、腰が立つように支える背もたれや、座面が骨盤を支える形状に作られているチェアであれば、肩こりや腰痛への対策になります。
在宅ワーク用のチェアの選び方(ハイデスク編)
理想のワーキングチェアの条件を確認したところで、高さのある一般的な仕事机やダイニングテーブル用のチェアの選び方をもとに解説します。
- 予算からおおまかな種類を決める
- ワーキングデスクに干渉しないデザイン
- 床に合ったキャスターを選ぶ
- 重視する機能で絞り込む
- 最も簡単な選び方
- 現在のチェアをカスタマイズして使う
予算からおおまかな種類を決める
チェア選びの際、在宅ワークにどれだけの予算をかけられるのかを考えましょう。仕事にのみ使う場合は全額を必要経費として計上できます。
チェアをプライベートでも使用する場合は、私用と仕事用の使用時間の割合などをもとに経費に計上します。
一般用
<予算: 1〜3万円>
予算の目安ですが、一般企業にあるような「事務机用の椅子」のような座面が回転するタイプのチェアは1〜3万円が主流です。事業者向けのメーカーに限らず、無印やニトリなど自宅用家具店でも販売されています。
ゲーム用
<予算: 3〜5万円>
5万円前後あれば、ゲーミングチェアも選択肢に入ってきます。ゲーミングチェアは名前の通り、ゲーマー向けのチェアです。長時間プレイしても疲れにくいように設計されています。
リラックスした状態でもゲームができるよう、ヘッドレストがあり、ほとんどのモデルが背もたれを直角に近い状態からリクライニングできるのが特徴です。また、プレースタイルに合わせてアームレストの可動域が広いのも特徴です。
多機能オフィスチェア
<予算: 8〜15万円>
少し高価なオフィスチェアは、多機能でデスクワークに向いている商品です。長く座っていても疲れないのはゲーミングチェアと同じですが、前傾姿勢に対応していたりシートを前後に調整ができたりします。
後に紹介するアーロンチェアに機能面では劣らないチェアもあります。
高級ライン
<予算: 25万円>
仕事用チェアの中で高級ラインは25万円程が目安です。仕事用の椅子として開発されたハーマンの「アーロンチェア」は有名で、事務仕事に限らず、デザイナーや漫画家などのクリエイターにも歓迎されています。
アーロンチェアは座面・背もたれ共にメッシュで作られているため、通気性に優れていながらも姿勢をサポートするつくりです。また、体型に合った細かなサイズ展開も豊富です。
ワーキングデスクに干渉しないデザインを選ぶ
ワーキングチェアを選ぶ際には、理想の座面の高さだけではなく天板や引き出しの厚さなどを勘案したデスク下の長さにも気をつけましょう。
この場合の干渉とはお互いにぶつかってしまうことを言い、肘掛けがデスクの引き出しにぶつかってしまいデスク下の空間にチェアが収まりきらない、スマートな形のデスクに大きなチェアを選んだため横幅が合わない、といった例が挙げられます。
仕事中にチェアの位置を調整できないほか、作業環境の動線が悪くなる場合もあります。
事前にデスクを計測して以下の点を確認
- 肘掛けの取り外しが可能か
- 座面を高くした時に肘掛けがデスクに干渉しないか
- 横幅は収まるサイズか
床材に合ったキャスターを選ぶ
キャスター付きのワーキングチェアの場合は、床を傷つけない形状や素材のものをセレクトしましょう。
キャスターと一言に言っても、車輪型・円筒型など接地面の広さが異なるもの、また素材もプラスチック製やゴム製など幅があります。
チェック
フローリングの場合は比較的柔らかい素材のキャスター、クッションフロアには接地面の大きいキャスター、畳敷きなどの場合は、滑りを良くして傷を防ぐチェア用のミニカーペットを敷くのもよいでしょう。
求める機能から絞り込む
ワーキングチェアの機能としては、キャスターの有無、座面の回転、昇降機能、アームレストの調整や取り外し、背もたれのリクライニング(倒した状態での固定)またはロッキング(一時的に後ろに倒れること)があります。
また、在宅ワークに使用するという点に注目すると、背もたれから膝までの距離が長すぎず、腰部分を支えるクッションや背当てがあるものが腰痛防止には有用です。
最も簡単な選び方: デスクと同じシリーズを使う
最も簡単にチェアを選びたい場合には、現在使っている仕事用の机と同じシリーズのチェアを選ぶのが最速手段です。
シリーズが同じ場合、基本的には同じメーカーや供給元が製造しているため互換性も高く、チェア探しに時間を割かずに済みます。これから仕事机の購入を検討している場合は、デスクとチェアのセットで探し、高さや角度などを調整して使うとよいでしょう。
現在のチェアをカスタマイズして使う
すでにワーキングチェアを購入してしまっている場合、処分や買い替えには手間がかかります。現在のチェアに足りない要素をクッションなどでカバーする方法もおすすめです。
背筋を伸ばした状態をキープしやすい背当てなどはカー用品などにも多いため、事務用品や家具用品に限らず探してみると安くカスタマイズできます。
在宅ワーク用のチェア・座椅子の選び方(ローテーブル編)
在宅ワークでは、ローテーブル(座卓)で仕事をする人もいるでしょう。この項では、ローテーブルに合ったチェア、いわゆる座椅子の選び方を紹介します。
正座サポートの椅子や座椅子を選ぶ
床に座る場合、最も身体に負担のない座り方は骨盤の位置が立った状態に近い正座だと言われています。作業時にあぐらをかく人もいますが、前傾姿勢になりやすく、腰痛や肩こりの原因になりえます。
しかし、仕事中ずっと正座するのはあまり現実的ではありません。したがって、座卓の高さに合わせて「正座椅子」や「座椅子」を選ぶのがよいでしょう。
テレワーク需要に応じて座卓にもバリエーションが増えています。
予算で選ぶ
<予算: 3,000円〜2万円>
座椅子の場合、ほとんどは回転やロッキング機能が無いため比較的安価で揃えられます。安いものであれば3,000円ほど、骨盤矯正用など特殊な形状のものは2万円ほどと幅があります。
基本的には素材やブランド、形状の特殊さによって価格が変動します。
座椅子は背の高いワーキングチェアに比べてカスタマイズできる範囲が限られているため、今の座椅子が合わないと感じている場合には買い換えた方が簡単な場合もままあります。
机の高さと肘の高さから座面の高さを決める
ハイテーブルの時と同様に、基本的には天板と肘の角度が90度になる座面の高さのものを選ぶと、ハイテーブルでの仕事同様肩こりの予防になります。
表面はファブリック素材を用いたものがメインですが、中身は綿やウレタン、ハニカムゲルなど多岐に渡ります。沈み込みが深いものだと座面の高さが低くなることも考慮して選びましょう。
また、座椅子の場合は足をどう組むかも課題です。座面の下に足を入れ込むスペースがあるものやあぐら用の座椅子など、座り方に合わせた選び方も重要です。
形状は様々。使用頻度や場所に応じて選ぶ
座椅子の場合、使用素材やリクライニングの調整角度の豊富さ、重さに差が大きく、形状もワーキングチェア以上にバリエーション豊かなのが特徴です。
作業をする机に置いたままにするのか、食事の度に片づけるのかといった視点も入れて選びましょう。
スペースに余裕がない場合は、折りたたみができるものや、薄手でコンパクトに片付けられる座椅子も選択肢に入れると邪魔にならずにすみます。
在宅ワーカーは腰痛や肩こりが起きにくいチェアを選びましょう
この記事では、在宅ワーカー向けに肩こりや腰痛が起こりにくいチェアの選び方を紹介してきました。
ハイテーブル・ローテーブルともに、机の天板に対して肘が直角になる高さのある椅子を準備するのが肩こりや腰痛を防ぐポイントとなります。
昇降機能のあるチェアであれば高さの調整は容易ですが、背もたれやアームレスト、デスクの高さの調整などお金がかかる部分は、クッションや背当てなどで調整してもよいでしょう。
座卓にもバリエーションは増えていますが、理想的な姿勢を維持するのは難しい場合もあります。デスクとチェアの座面の高さの差を意識して、自分の身体に合ったチェアを選びましょう。